Japanisch Ausgabe
Literatur
歯車
BooksWhale-Ausgabe auf Japanisch von 芥川龍之介
芥川晩年の不安、幻視、都市感覚、死の予感が凝縮された短篇小説。
- Vorschau
- Auszug aus dem vorbereiteten Text
- Formate
- Online-Reader, EPUB, PDF
- Zugriff
- Bibliotheks-Claim
Bucheinführung
歯車
『歯車』は芥川龍之介晩年の代表的な作品で、語り手の視界に現れる歯車の幻覚を中心に、神経の疲弊、文学者の孤独、都市の不穏、死への接近を描く。私小説的な緊張と象徴性が強い一篇である。
BooksWhale-Ausgabe
Wie diese Ausgabe vorbereitet wurde
Diese Ausgabe basiert auf einem gemeinfreien Text und wurde von BooksWhale für digitales Lesen vorbereitet.
Public-Domain-Grundlage
Warum diese Ausgabe geteilt werden kann
芥川龍之介 died in 1927, and 歯車 was first published or composed in 1927; these dates support the public-domain basis for this edition.
Vorschau lesen
Auszug aus dem vorbereiteten Text
Vorschau aus dem vorbereiteten Lesetext.
VorschaukapitelFull textVorschau lesen
歯車
芥川龍之介
Vorschaukapitel歯車Vorschau
歯車
Vorschaukapitel芥川龍之介Vorschau
芥川龍之介
Inhaltsverzeichnis
In dieser Ausgabe
- 01Full text
- 02歯車
- 03芥川龍之介
- 04一 レエン・コオト
- 05「妙なこともありますね。××さんの屋敷には昼間でも幽霊が出るつて云ふんですが。」
- 06「昼間でもね。」
- 07僕は冬の西日の当つた向うの松山を眺めながら、善い加減に調子を合せてゐた。
- 08「尤も天気の善い日には出ないさうです。一番多いのは雨のふる日だつて云ふんですが。」
- 09「雨のふる日に濡れに来るんぢやないか?」
- 10「御常談で。……しかしレエン・コオトを着た幽霊だつて云ふんです。」
- 11「地玉子、オムレツ」
- 12僕はかう云ふ紙札に東海道線に近い田舎を感じた。それは麦畠やキヤベツ畠の間に電気機関車の通る田舎だつた。……
- 13「写真屋さん、ラヴ・シインつて何?」
- 14「可愛いわね、先生は。可愛い目をしていらつしやるわね。」
- 15「大したものを嵌めてゐるね」
- 16「だつてフランは暴落するしさ。」
- 17「それは新聞を読んでゐればね。しかし向うにゐて見給へ。新聞紙上の日本なるものはのべつに大地震や大洪水があるから。」
- 18「あすこに女が一人ゐるだらう? 鼠色の毛糸のシヨオルをした、……」
- 19「あの西洋髪に結つた女か?」
- 20「うん、風呂敷包みを抱へてゐる女さ。あいつはこの夏は軽井沢にゐたよ。ちよつと洒落れた洋装などをしてね。」
- 21「軽井沢にゐた時には若い亜米利加人と踊つたりしてゐたつけ。モダアン……何と云ふやつかね。」
- 22「麒麟はつまり一角獣ですね。それから鳳凰もフエニツクスと云ふ鳥の、……」
- 23「もし堯舜もゐなかつたとすれば、孔子は※をつかれたことになる。聖人の※をつかれる筈はない。」
- 24「しかも今は寒中だと云ふのに。」
- 25そこへ突然鳴り出したのはベツドの側にある電話だつた。僕は驚いて立ち上り、受話器を耳へやつて返事をした。
- 26「どなた?」
- 27「あたしです。あたし……」
- 28相手は僕の姉の娘だつた。
- 29「何だい? どうかしたのかい?」
- 30「大へんなこと?」
- 31「ええ、ですからすぐに来て下さい。すぐにですよ。」
- 32二 復讐
- 33「ここにありました。このバスの部屋の中に。」
- 34「どうして又そんな所に行つてゐたのだらう?」
- 35「さあ、鼠かも知れません。」
- 36「今年は家が火事になるかも知れないぜ。」
- 37「そんな縁起の悪いことを。……それでも火事になつたら大変ですね。保険は碌についてゐないし、……」
- 38「くたばつてしまへ!」
- 39「ちよつと通りがかりに失礼ですが、……」
- 40「Aさんではいらつしやいませんか?」
- 41「さうです。」
- 42「どうもそんな気がしたものですから、……」
- 43「何か御用ですか?」
- 44「いえ、唯お目にかかりたかつただけです。僕も先生の愛読者の……」
- 45「何しろかう云ふ際だしするから、何も彼も売つてしまはうと思ふの。」
- 46「それはさうだ。タイプライタアなどは幾らかになるだらう。」
- 47「ええ、それから画などもあるし。」
- 48「次手にNさん(姉の夫)の肖像画も売るか? しかしあれは……」
- 49「何をしてゐるの?」
- 50「何でもないよ。……唯あの肖像画は口のまはりだけ、……」
- 51姉はちよつと振り返りながら、何も気づかないやうに返事をした。
- 52「髭だけ妙に薄いやうでせう。」
- 53「まあ、善いでせう。」
- 54「又あしたでも、……けふは青山まで出かけるのだから。」
- 55「ああ、あすこ? まだ体の具合は悪いの?」
- 56「やつぱり薬ばかり嚥んでゐる。催眠薬だけでも大変だよ。ヴエロナアル、ノイロナアル、トリオナアル、ヌマアル……」
- 57「一番偉いツオイスの神でも復讐の神にはかなひません。……」
- 58三 夜
- 59「もし、もし、二十銭頂きますが、……」
- 60僕の投げ出したのは銅貨だつた。
- 61「君はここに泊つてゐるのですか?」
- 62「ええ、……」
- 63「仕事をしに?」
- 64「ええ、仕事もしてゐるのです。」
- 65彼はぢつと僕の顔を見つめた。僕は彼の目の中に探偵に近い表情を感じた。
- 66「どうです、僕の部屋へ話しに来ては?」
- 67「S子さんの唇を見給へ。あれは何人もの接吻の為に、……」
- 68僕はふと口を噤み、鏡の中に彼の後ろ姿を見つめた。彼は丁度耳の下に黄いろい膏薬を貼りつけてゐた。
- 69「何人もの接吻の為に?」
- 70「そんな人のやうに思ひますがね。」
- 71「おとうさん、タオルは?」
- 72「タオルは入らない。子供たちに気をつけるのだよ。」
- 73「大火事でしたわね。」
- 74「僕もやつと逃げて来たの。」
- 75「何時?」
- 76「三時半ぐらゐでございます。」
- 77四 まだ?
- 78「どうした、君の目は?」
- 79「これか? これは唯の結膜炎さ。」
- 80「久しぶりだなあ。朱舜水の建碑式以来だらう。」
- 81彼は葉巻に火をつけた後、大理石のテエブル越しにかう僕に話しかけた。
- 82「さうだあのシユシユン……」
- 83「君はちつとも書かないやうだね。『点鬼簿』と云ふのは読んだけれども。……あれは君の自叙伝かい?」
- 84「うん、僕の自叙伝だ。」
- 85「あれはちよつと病的だつたぜ。この頃は体は善いのかい?」
- 86「不相変薬ばかり嚥んでゐる始末だ。」
- 87「僕もこの頃は不眠症だがね。」
- 88「僕も?――どうして君は『僕も』と言ふのだ?」
- 89「だつて君も不眠症だつて言ふぢやないか? 不眠症は危険だぜ。……」
- 90「気違ひの息子には当り前だ。」
- 91「坐浴、――ベエトオヴエンもやはり坐浴をしてゐた。……」
- 92「モオル――Mole……」
- 93五 赤光
- 94「その植木屋の娘と云ふのは器量も善いし、気立ても善いし、――それはわたしに優しくしてくれるのです。」
- 95「いくつ?」
- 96「ことしで十八です。」
- 97「如何ですか、この頃は?」
- 98「不相変神経ばかり苛々してね。」
- 99「それは薬では駄目ですよ。信者になる気はありませんか?」
- 100「若し僕でもなれるものなら……」
- 101「何もむづかしいことはないのです。唯神を信じ、神の子の基督を信じ、基督の行つた奇蹟を信じさへすれば……」
- 102「悪魔を信じることは出来ますがね。……」
- 103「ではなぜ神を信じないのです? 若し影を信じるならば、光も信じずにはゐられないでせう?」
- 104「しかし光のない暗もあるでせう。」
- 105「光のない暗とは?」
- 106「それは悪魔の行ふ奇蹟は。……」
- 107「どうして又悪魔などと云ふのです?」
- 108「あすこにあるのは?」
- 109この逞しい老人は古い書棚をふり返り、何か牧羊神らしい表情を示した。
- 110「ドストエフスキイ全集です。『罪と罰』はお読みですか?」
- 111僕の次にはひつたのは或地下室のレストオランだつた。僕はそこのバアの前に立ち、ウイスキイを一杯註文した。
- 112「歌集『赤光』の再版を送りますから……」
- 113「エエア・シツプならばございますが、……」
- 114六 飛行機
- 115「静かですね、ここへ来ると。」
- 116「それはまだ東京よりもね。」
- 117「ここでもうるさいことはあるのですか?」
- 118「だつてここも世の中ですもの。」
- 119「この町には気違ひが一人ゐますね。」
- 120「Hちやんでせう。あれは気違ひぢやないのですよ。莫迦になつてしまつたのですよ。」
- 121「気味が悪くなるなんて、……もつと強くならなければ駄目ですよ。」
- 122「兄さんは僕などよりも強いのだけれども、――」
- 123無精髭を伸ばした妻の弟も寝床の上に起き直つたまま、いつもの通り遠慮勝ちに僕等の話に加はり出した。
- 124「強い中に弱いところもあるから。……」
- 125「おやおや、それは困りましたね。」
- 126「妙に人間離れをしてゐるかと思へば、人間的欲望もずゐぶん烈しいし、……」
- 127「善人かと思へば、悪人でもあるしさ。」
- 128「いや、善悪と云ふよりも何かもつと反対なものが、……」
- 129「ぢや大人の中に子供もあるのだらう。」
- 130「あの飛行機は落ちはしないか?」
- 131「大丈夫。……兄さんは飛行機病と云ふ病気を知つてゐる?」
- 132僕は巻煙草に火をつけながら、「いや」と云ふ代りに頭を振つた。
- 133「どうした?」
- 134「いえ、どうもしないのです。……」
- 135妻はやつと顔を擡げ、無理に微笑して話しつづけた。
- 136「どうもした訣ではないのですけれどもね、唯何だかお父さんが死んでしまひさうな気がしたものですから。……」
- 137(昭和二年、遺稿)
Sprachverfügbarkeit
Andere Sprachen
Weitere Sprachausgaben sind noch nicht veröffentlicht. Sobald verfügbar, werden sie hier verlinkt.
Andere Sprache anfragen