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文学

春と修羅

日本語 BooksWhale エディション · 宮沢賢治

岩手の風景、農村の生活、妹への思いを、感覚と科学的な言葉が交わる「心象スケッチ」として記した詩集。

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本の紹介

春と修羅

宮沢賢治が一九二四年に刊行した詩集。岩手の山野、空や雲、農村の仕事、妹の死に寄せる思いが、音と色彩に満ちた言葉で表される。作者が「心象スケッチ」と呼ぶ作品群では、自然の観察、科学への関心、宗教的な感覚が重なり、刻々と変化する世界と心の動きが描かれる。本版は第一詩集『春と修羅』の日本語本文を収める。

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宮沢賢治は1933年に没した。本作は1924年に刊行され、原著の著作権保護期間は満了している。本版は日本語の原文を収録する。

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春と修羅

プレビュー章序プレビュー

わたくしといふ現象は 仮定された有機交流電燈の ひとつの青い照明です (あらゆる透明な幽霊の複合体) 風景やみんなといつしよに せはしくせはしく明滅しながら いかにもたしかにともりつづける 因果交流電燈の ひとつの青い照明です (ひかりはたもち その電燈は失はれ)

これらは二十二箇月の 過去とかんずる方角から 紙と鉱質インクをつらね (すべてわたくしと明滅し みんなが同時に感ずるもの) ここまでたもちつゞけられた かげとひかりのひとくさりづつ そのとほりの心象スケツチです

これらについて人や銀河や修羅や海胆は 宇宙塵をたべ または空気や塩水を呼吸しながら それぞれ新鮮な本体論もかんがへませうが それらも畢竟こゝろのひとつの風物です たゞたしかに記録されたこれらのけしきは 記録されたそのとほりのこのけしきで それが虚無ならば虚無自身がこのとほりで ある程度まではみんなに共通いたします (すべてがわたくしの中のみんなであるやうに みんなのおのおののなかのすべてですから)

けれどもこれら新生代沖積世の 巨大に明るい時間の集積のなかで 正しくうつされた筈のこれらのことばが わづかその一点にも均しい明暗のうちに (あるいは修羅の十億年) すでにはやくもその組立や質を変じ しかもわたくしも印刷者も それを変らないとして感ずることは 傾向としてはあり得ます けだしわれわれがわれわれの感官や 風景や人物をかんずるやうに そしてたゞ共通に感ずるだけであるやうに 記録や歴史 あるいは地史といふものも それのいろいろの論料といつしよに (因果の時空的制約のもとに) われわれがかんじてゐるのに過ぎません おそらくこれから二千年もたつたころは それ相当のちがつた地質学が流用され 相当した証拠もまた次次過去から現出し みんなは二千年ぐらゐ前には 青ぞらいつぱいの無色な孔雀が居たとおもひ 新進の大学士たちは気圏のいちばんの上層 きらびやかな氷窒素のあたりから すてきな化石を発掘したり あるいは白堊紀砂岩の層面に 透明な人類の巨大な足跡を 発見するかもしれません

すべてこれらの命題は 心象や時間それ自身の性質として 第四次延長のなかで主張されます

大正十三年一月廿日宮沢賢治

プレビュー章春と修羅 — 屈折率プレビュー

七つ森のこつちのひとつが 水の中よりもつと明るく そしてたいへん巨きいのに わたくしはでこぼこ凍つたみちをふみ このでこぼこの雪をふみ 向ふの縮れた亜鉛の雲へ 陰気な郵便脚夫のやうに (またアラツデイン 洋燈とり) 急がなければならないのか (一九二二、一、六)

目次

このエディションの内容

  1. 01Full text
  2. 02序
  3. 03春と修羅 — 屈折率
  4. 04くらかけの雪
  5. 05日輪と太市
  6. 06丘の眩惑
  7. 07カーバイト倉庫
  8. 08コバルト山地
  9. 09ぬすびと
  10. 10恋と病熱
  11. 11春光呪咀
  12. 12有明
  13. 13谷
  14. 14陽ざしとかれくさ
  15. 15雲の信号
  16. 16風景
  17. 17習作
  18. 18休息
  19. 19おきなぐさ
  20. 20かはばた
  21. 21真空溶媒
  22. 22蠕虫舞手
  23. 23小岩井農場 — パート一
  24. 24パート二
  25. 25パート三
  26. 26パート四
  27. 27パート五  パート六 — パート七
  28. 28パート九
  29. 29グランド電柱 — 林と思想
  30. 30霧とマツチ
  31. 31芝生
  32. 32報告
  33. 33風景観察官
  34. 34岩手山
  35. 35高原
  36. 36印象
  37. 37高級の霧
  38. 38電車
  39. 39天然誘接
  40. 40グランド電柱
  41. 41山巡査
  42. 42電線工夫
  43. 43たび人
  44. 44竹と楢
  45. 45銅線
  46. 46滝沢野
  47. 47東岩手火山
  48. 48犬
  49. 49マサニエロ
  50. 50栗鼠と色鉛筆
  51. 51無声慟哭 — 永訣の朝
  52. 52松の針
  53. 53無声慟哭
  54. 54風林
  55. 55白い鳥
  56. 56オホーツク挽歌 — 青森挽歌
  57. 57オホーツク挽歌
  58. 58樺太鉄道
  59. 59鈴谷平原
  60. 60噴火湾(ノクターン)
  61. 61風景とオルゴール — 不貪慾戒
  62. 62雲とはんのき
  63. 63宗教風の恋
  64. 64風景とオルゴール
  65. 65風の偏倚
  66. 66昴
  67. 67第四梯形
  68. 68火薬と紙幣
  69. 69過去情炎
  70. 70一本木野
  71. 71鎔岩流
  72. 72イーハトヴの氷霧
  73. 73冬と銀河ステーシヨン

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