Japanese Edition
Military
五輪書
Japanese BooksWhale Edition by Miyamoto Musashi
剣術、兵法、勝負観を地・水・火・風・空の五巻で説く武蔵の古典。
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Book introduction
五輪書
『五輪書』は宮本武蔵が晩年にまとめた兵法書で、剣術の技法だけでなく、勝負の見方、間合い、心の置き方、敵を読む態度を説きます。五巻構成により、武道・戦略・日本思想を結ぶ古典として読まれています。
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宮本武蔵は1645年に没し、『五輪書』は同年ごろ成立した兵法書です。成立年代と著者没年は、本日本語原文版の公版性を判断する根拠になります。
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五輪書
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自 序
兵法の道、二天一流と号し、数年鍛錬の事、始て書物に顕はさんと思、時、寛永二十年十月上旬の比、九州肥後の地岩戸山に上り、天を拜し、観音を礼し、佛前に向。生国播磨の武士、新免武蔵守藤原玄信、年つもりて六十。
われ若年の昔より、兵法の道に心をかけ、十三歳にして始て勝負をす。其あひて、新當流有馬喜兵衛と云兵法者にうち勝、十六歳にして、但馬國秋山と云強力の兵法者に打かち、二十一歳にして、都へのぼり、天下の兵法者に逢、数度の勝負をけつすといへども、勝利を得ざると云事なし。其後、國々所々に至り、諸流の兵法者に行合、六十餘度勝負をすといへども、一度も其利をうしなはず。其程、年十三より二十八九の事也。
われ三十を越て、跡をおもひミるに、兵法至極してかつにハあらず。をのづから道の器用ありて、天理をはなれざる故か、又ハ、他流の兵法不足なる所にや。其後、猶も深き道理を得んと、朝鍛夕錬して見れバ、をのづから兵法の道に逢事、我五十歳の比也。それより以来は、尋入るべき道なくして、光陰を送る。
兵法の利に任て、諸藝諸能の道となせバ、万事におゐて、われに師匠なし。今此書を作るといへども、佛法儒道の古語をもからず、軍記軍法のふるき事をも用ひず。此一流のミたて、實の心を顕す事、天道と世音を鏡として、十月十日の夜、寅の一天に筆をとつて、書始るもの也。
序 文
夫、兵法と云事、武家の法也。将たるものハ、とりわき此法をおこなひ、卒たる者も、此道を知べき事なり。
今世の間に、兵法の道、たしかにわきまへたると云武士なし。先、道を顕して有ハ、佛法として人をたすくる道、又、儒道として文の道を糺し、醫者と云て諸病を治する道、或は歌道者とて和歌の道をおしへ、或ハ数寄者、弓法者、其外、諸藝諸能までも、思ひ〳〵に稽古し、心々にすくもの也。兵法の道にハ、すく人まれなり。
先、武士ハ、文武二道と云て、二の道を嗜む事、是道也。たとひ此道不器用なりとも、武士たるものハ、おのれ〳〵が分才ほどは、兵の法をバ勤むべき事也。
大かた武士の思ふ心をはかるに、武士ハたゞ、死と云道を嗜む事と覚ゆるほどの儀也。死道におゐてハ、武士ばかりに限らず、出家にても女にても、百姓以下に至、義理をしり、恥をおもひ、死する所を思ひきる事は、其差別なきもの也。
武士の兵法をおこなふ道ハ、何事におゐても、人にすぐるゝ所を本とし、或ハ一身の切合に勝、或ハ数人の戦に勝、主君のため我身のため、名をあげ身をもたてんとおもふ、これ兵法の徳を以てなり。
又、世の間に、兵法の道を習ても、實のとき、役にハ立まじきとおもふ心あるべし。其儀におゐては、何時にても役に立様に稽古し、万事に至り、役に立様におしゆる事、是兵法の実の道也。
一、兵法の道と云事
漢土和朝も、此道をおこなふものを、兵法達者と云傳たり。武士として、此法を学ばずと云事有べからず。近代、兵法者と云て世をわたるもの、これハ劔術一通りの儀也。常陸國鹿嶋かんとりの社人共、明神の傳として流々を立て、國々を廻り人に傳事、近き比の事也。
いにしへより十能七藝とあるうちに、利方と云て、藝にわたるといへ共、利方と云出すより、劔術一通りにかぎるべからず。劔術一へんの利までにてハ、劔術もしりがたし。勿論、兵の法にハ叶べからず。
世の中を見るに、諸藝をうり物に仕立、わが身をうり物の様に思ひ、諸道具に付ても、うり物にこしらゆる心、花實の二つにして、花よりも実のすくなき所也。とりわき此兵法の道に、色をかざり花をさかせて、術をてらし、或ハ一道場、二道場など云て、此道をおしへ、此道を習て利を得んと思事、誰か謂、なまへいほう大きずのもと、誠なるべし。
凡、人の世をわたる事、士農工商とて四の道也。
一にハ農の道。農人ハ、色々の農具をまうけ、四季轉変のこゝろへ暇なくして、春秋を送る事、是農の道也。
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序 文
兵法二天一流の心、水を本として、利方の法をおこなふに依て、水の巻として、一流の太刀筋、此書に書顕すもの也。
此道、何れもこまやかに心のまゝにハ書分がたし。たとヘ言葉ハつゞかざると云とも、利ハおのづから聞ゆべし。此書に書付たる所、一こと〳〵、一字〳〵にて思案すべし。
大かたにおもひてハ、道の違ふ事多かるべし。兵法の利におゐてハ、一人と一人との勝負の様に書付たる所なりとも、万人と万人との合戦の利に心得、大に見立る所、肝要也。
此道にかぎつて、すこしなりとも道を違、道の迷ひ有てハ、悪道におつるもの也。
此書付斗を見て、兵法の道に及事にハあらず。此書に書付たるを、我身にとつて、書付を見るとおもはず、習とおもはず、にせものにせずして、則、我心より見出したる利にして、常に其身に成て、能々工夫すべし。
一、兵法、心持の事
兵法の道におゐて、心の持様ハ、常の心に替る事なかれ。常にも兵法のときにも、少も替らずして、心を廣く直にして、きつくひつぱらず、すこしもたるまず、心のかたよらぬやうに、心をまん中に置て、心を静にゆるがせて、其ゆるぎのせつなも、ゆるぎやまぬやうに、能々吟味すべし。
静なるときも、こゝろハしづかならず、何と早き時も、心ハ少もはやからず。心ハ躰につれず、躰ハ心につれず、心に用心して、身には用心をせず。心のたらぬ事なくして、心を少もあまらせず、上の心はよハくとも、底の心を強く、心を人に見分けられざる様にして、少身なるものハ、心に大なる事を残らず知り、大身なるものハ、心にちいさき事を能知りて、大身も小身も、心を直にして、我身のひいきをせざる様に、心をもつ事肝要也。
心の内にごらず、廣くして、廣き所に智恵をおくべき也。智恵も心も、ひたとみがく事専也。智恵をとぎ、天下の利非をわきまへ、物毎の善悪をしり、万の藝能、其道々をわたり、世間の人にすこしもだまされざるやうにして、後、兵法の智恵となる心也。
兵法の智恵におゐて、とりわきちがふ事、有もの也。戦の場、万事せわしき時なりとも、兵法、道理を極め、うごきなき心、能々吟味すべし。
一、兵法、身なりの事
身のかゝり、顔ハうつむかず、あをのかず、かたむかず、ひずまず、目をミださず、額にしわをよせず、眉あひにしわをよせて、目の玉のうごかざる様にして、またゝきをせぬように思ひて、目を少しすくめる様にして、うらやかにみゆる顔。鼻筋直にして、少おとがひに出す心也。
首ハ、うしろのすぢを直に、うなじに力をいれて、肩より惣身はひとしく覚へ、両の肩をさげ、背筋をろくに、尻を出さず、膝より足先まで力を入て、腰のかゞまざるやうに、腹をはり、くさびをしむると云て、脇ざしのさやに腹をもたせて、帯のくつろがざる様に、くさびをしむる、と云おしへ有。
惣而、兵法の身におゐて、常の身を兵法の身とし、兵法の身を常の身とする事、肝要也。能々吟味すべし。
一、兵法の眼付と云事
目の付け様ハ、大に廣く付る目なり。観見二ツの事、観の目強く、見の目弱く、遠き所をちかく見、近き所を遠く見る事、兵法の専也。
敵の太刀を知り、聊敵の太刀を見ずと云事、兵法の大事也。工夫有べし。
此目付、ちいさき兵法にも、大なる兵法にも、おなじ事也。目の玉うごかずして、両脇を見る事、肝要也。
かやうの事、いそがしき時、俄にハわきまへがたし。此書付を覚、常住此目付になりて、何事にも目付のかはらざる所、能々吟味有べきもの也。
一、太刀の持様の事
刀のとりやうハ、大指、ひとさし指をうくるこゝろにもち、たけ高指しめずゆるまず、くすしゆび、小指をしむる心にして持也。
手のうちにはくつろぎの有事悪し。太刀をもつと云て、持たるばかりにてハ悪し。敵をきるものなりとおもひて、太刀を取べし。敵を切ときも、手の内にかハりなく、手のすくまざる様に持べし。
若、敵の太刀を、はる事、うくる事、あたる事、おさゆる事ありとも、大指、人さしゆびばかりを、すこしかゆる心にして、兎にも角にも切とおもひて、太刀を取べし。ためし物など切ときの手のうちも、兵法にしてきる時の手のうちも、人をきるといふ手のうちにかハる事なし。
惣而、太刀にても手にても、いつくと云事を嫌ふ。いつくハ、しぬる手也。いつかざるハ、いくる手也。能々心得べきもの也。
一、足つかひの事
足のはこび様の事、つまさきをすこしうけて、くびすをつよく踏べし。足つかひハ、ことによりて、大小遅速は有とも、常にあゆむがごとし。足に、飛足、浮足、ふみすゆる足とて、是三つ、嫌ふ足也。
此道の大事にいはく、陰陽の足と云、是肝心也。陰陽の足ハ、片足ばかりうごかさぬもの也。切とき、引とき、うくる時も、陰陽とて、右左〳〵と踏足也。かへす〳〵、片足踏事有べからず。能々吟味すべきもの也。
一、五方の構の事
五方の構ハ、上段、中段、下段、右の脇に構る事、左の脇に構る事、是五方也。構五ツにわかつといへども、皆人を切らむため也。構、五ツより外ハなし。何れの構なりとも、構ると思はず、切事なりと思ふべし。
構の大小は、ことにより、利にしたがふべし。上中下ハ、躰の構也。両脇ハ、ゆふの構也。右左のかまへ、上のつまりて、脇一方つまりたる所などにての構也。右左ハ、所によりて分別有。
Table of contents
Inside this edition
- 01Full text
- 02地之巻
- 03水之巻
- 04火之巻
- 05風之巻
- 06空之巻
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