Japanese Edition
Literature
土
Japanese BooksWhale Edition by Nagatsuka Takashi
農村の貧困、労働、家族、病、金銭、土地への執着を写実的に描いた明治文学の長編。
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Book introduction
土
『土』は茨城の農村を舞台に、貧しい農家の生活、季節ごとの労働、家族関係、病、金銭、土地への執着を細かく描きます。長塚節は農村社会を理想化せず、方言、身体感覚、自然環境、生活の厳しさ、近代化の陰に置かれた地方現実を記録しています。
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長塚節は1915年に没し、『土』は1910年に刊行されています。これらの年代は、本日本語原文版の公版性を判断する根拠になります。
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土
長塚節
土 長塚節
------------------------------------------------------- 【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ (例)遣つた
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:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (数字は、JIS X 0213の面区点番号またはUnicode、底本のページと行数) (例)
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号) (例)とう/\ *濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」 -------------------------------------------------------
「土」に就て 漱石
「土」が「東京朝日」に連載されたのは一昨年の事である。さうして其責任者は余であつた。所が不幸にも余は「土」の完結を見ないうちに病氣に罹つて、新聞を手にする自由を失つたぎり、又「土」の作者を思ひ出す機會を有たなかつた。 當初五六十囘の豫定であつた「土」は、同時に意外の長篇として發達してゐた。途中で話の緒口を忘れた余は、再びそれを取り上げて、矢鱈な區切から改めて讀み出す勇氣を鼓舞しにくかつたので、つい夫限に打ち遣つたやうなものゝ、腹のなかでは私かに作者の根氣と精力に驚ろいてゐた。「土」は何でも百五六十囘に至つて漸く結末に達したのである。 冷淡な世間と多忙な余は其後久しく「土」の事を忘れてゐた。所がある時此間亡くなつた池邊君に會つて偶然話頭が小説に及んだ折、池邊君は何故「土」は出版にならないのだらうと云つて、大分長塚君の作を褒めてゐた。池邊君は其當時「朝日」の主筆だつたので「土」は始から仕舞迄眼を通したのである。其上池邊君は自分で文學を知らないと云ひながら、其實摯實な批評眼をもつて「土」を根氣よく讀み通したのである。余は出版界の不景氣のために「土」の單行本が出る時機がまだ來ないのだらうと答へて置いた。其時心のうちでは、隨分「土」に比べると詰らないものも公けにされる今日だから、出來るなら何時か書物に纏めて置いたら作者の爲に好からうと思つたが、不親切な余は其日が過ぎると、又「土」の事を丸で忘れて仕舞つた。 すると此春になつて長塚君が突然尋ねて來て、漸く本屋が「土」を引受ける事になつたから、序を書いて呉れまいかといふ依頼である。余は其時自分の小説を毎日一囘づゝ書いてゐたので、「土」を讀み返す暇がなかつた。已を得ず自分の仕事が濟む迄待つてくれと答へた。すると長塚君は池邊君の序も欲しいから序でに紹介して貰ひたいと云ふので、余はすぐ承知した。余の名刺を持つて「土」の作者が池邊君の玄關に立つたのは、池邊君の母堂が死んで丁度三十五日に相當する日とかで、長塚君はたゞ立ちながら用事丈を頼んで歸つたさうであるが、それから三日して肝心の池邊君も突然亡くなつて仕舞つたから、同君の序はとう/\手に入らなかつたのである。 余は「彼岸過迄」を片付けるや否や前約を踏んで「土」の校正刷を讀み出した。思つたよりも長篇なので、前後半日と中一日を丸潰しにして漸く業を卒へて考へて見ると、中々骨の折れた作物である。余は元來が安價な人間であるから、大抵の人のものを見ると、すぐ感心したがる癖があるが、此「土」に於ても全くさうであつた。先づ何よりも先に、是は到底余に書けるものでないと思つた。次に今の文壇で長塚君を除いたら誰が書けるだらうと物色して見た。すると矢張誰にも書けさうにないといふ結論に達した。 尤も誰にも書けないと云ふのは、文を遣る技倆の點や、人間を活躍させる天賦の力を指すのではない。もし夫れ丈の意味で誰も長塚君に及ばないといふなら、一方では他の作家を侮辱した言葉にもなり、又一方では長塚君を擔ぎ過ぎる策略とも取れて、何方にしても作者の迷惑になる計である。余の誰も及ばないといふのは、作物中に書いてある事件なり天然なりが、まだ長塚君以外の人の研究に上つてゐないといふ意味なのである。 「土」の中に出て來る人物は、最も貧しい百姓である。教育もなければ品格もなければ、たゞ土の上に生み付けられて、土と共に生長した蛆同樣に憐れな百姓の生活である。先祖以來茨城の結城郡に居を移した地方の豪族として、多數の小作人を使用する長塚君は、彼等の獸類に近き、恐るべく困憊を極めた生活状態を、一から十迄誠實に此「土」の中に收め盡したのである。彼等の下卑で、淺薄で、迷信が強くて、無邪氣で、狡猾で、無欲で、強欲で、殆んど余等(今の文壇の作家を悉く含む)の想像にさへ上りがたい所を、あり/\と眼に映るやうに描寫したのが「土」である。さうして「土」は長塚君以外に何人も手を著けられ得ない、苦しい百姓生活の、最も獸類に接近した部分を、精細に直叙したものであるから、誰も及ばないと云ふのである。
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「どうだね、一燻べあたつたらようがせう、今直に明くから」と傭人がいつてくれてもお品は臀から冷えるのを我慢して凝然と辛棒して居た。懷で眠つた與吉を騷がすまいとしては足の痺れるので幾度か身體をもぢ/\動かした。漸く風呂の明いた時はお品は待遠であつたので前後の考もなく急いで衣物をとつた。與吉は幸ひにぐつたりと成つてお袋の懷から離れるのも知らないのでおつぎが小さな手で抱いた。お品は段々と身體が暖まるに連れて始めて蘇生つたやうに恍惚とした。いつまでも沈んで居たいやうな心持がした。與吉が泣きはせぬかと心付いた時碌に洗ひもしないで出て畢つた。それでも顏がつや/\として髮の生際が拭つても/\汗ばんだ。さうしてしみ/″\と快かつた。お品は衣物を引つ掛けると直ぐと與吉を内懷へ入れた。お品の後へは下女が這入つたので、おつぎは其間待たねばならなかつた。おつぎが出た時はお品の身體は冷め掛けて居た。お品は自分が後ではいればよかつたのにと後悔した。 お品が自分の股引と足袋とをおつぎに提げさせて歸つた時に月は竊に隣の森の輪郭をはつきりとさせて其森の隙間が殊に明るく光つて居た。世間がしみ/″\と冷えて居た。お品は薄い垢じみた蒲團へくるまると、身體が又ぞく/\として膝かしらが氷つたやうに成つて居たのを知つた。
二
次の朝お品はまだ戸の隙間から薄ら明りの射したばかりに眼が覺めた。枕を擡げて見たが頭の心がしく/\と痛むやうでいつになく重かつた。狹い家の内に羽叩く鷄の聲がけたゝましく耳の底へ響いた。おつぎはまだすや/\として眠つて居る。戸の隙間が瞼を開いたやうに明るくなつた時鷄が復た甲走つて鳴いた。お品はおつぎを今朝は緩くりさせてやらうと思つて居た。それでもおつぎは鷄が又鳴いた時むつくり起きた。いつもと違つて餘りひつそりして居るので驚いたやうにあたりを見た。さうしてお袋がまだ自分の傍に蒲團へくるまつてるのを見た。 「おつう、せかねえでもえゝぞ、俺ら今朝少し工合が惡いから緩くりすつかんなよ」お品はいつた。おつぎは暫くもぢ/\しながら帶を締て大戸を一枚がら/\と開けて目をこすりながら庭へ出た。井戸端の桶には芋が少しばかり水に浸してあつて、其水には氷がガラス板位に閉ぢて居る。おつぎは鍋をいつも磨いて居る砥石の破片で氷を叩いて見た。おつぎは大戸を開け放して置いたので朝の寒さが侵入したのに氣がついて 「おつかあ、寒かなかつたか、俺ら知らねえで居た」いひながら大戸をがら/\と閉めた。闇くなつた家の内には竈の火のみが勢ひよく赤く立つた。おつぎは 「おゝ冷てえ」といひながら竈の口から捲れて出るへ手を翳して 「今朝は芋の水氷つたんだよ」とお袋の方を向いていつた。 「うむ、霜も降つたやうだな」お品は力なくいつた。戸口を後にしてお品は竈の火のべろ/\と燃え上るのを見た。 「何處でも眞白だよ」おつぎは竹の火箸で落葉を掻き立てながらいつた。 「夜明にひどく冷々したつけかんな」お品はいつて一寸首を擡げながら 「俺ら今朝はたべたかねえかんな、汝構あねえで出來たらたべた方がえゝぞ」お品はいつた。又氷つた飯で雜炊が煮られた。 「おつかあ、ちつとでもやらねえか」おつぎは茶碗をお袋の枕元へ出した。雜炊の焦げついたやうな臭ひがぷんと鼻を衝いた時お品は箸を執つて見ようかと思つて俯伏しになつて見たが、直に壓になつて畢つた。お品が動いたので懷の與吉は泣き出した。お品は俯伏した儘乳房を含ませた。さうして又芋の串を拵へて持たせた。 お品が表の大戸を開けさせた時は日がきら/\と東隣の森越しに庭へ射し掛けてきつかりと日蔭を限つて解け殘つた霜が白く見えて居た。庭先の栗の木の枯葉からも、枝へ掛けた大根の葉からも霜が解けて雫がまだぽたり/\と垂れて居る。庭へ敷いてある庭葢の藁も只ぐつしりと濕つて居る。冬になると霜柱が立つので庭へはみんな藁屑だの蕎麥幹だのが一杯に敷かれる。それが庭葢である。霜柱が庭から先の桑畑にぐらり/\と倒れつゝある。 お品は蒲團の中でも滅切暖かく成つたことを感じた。時々枕を擡げて戸口から外を見る。さうしては麥藁俵の側に置いた蒟蒻の手桶をどうかすると無意識に見つめる。横に成つて居る目からは東隣の森の梢が妙に變つて見えるので凝然と見つめては目が疲れるやうに成るので又蒟蒻の手桶へ目を移したりした。お品はどうかして少しでも蒟蒻を減らして置きたいと思つた。お品は其内に起きられるだらうと考へつゝ時々うと/\と成る。 「切干でも切つたもんだかな」おつぎが庭から大きな聲でいつた時お品はふと枕を擡げた。それでおつぎの聲は意味も解らずに微かに耳に入つた。 暫くたつてからお品は庭でおつぎがざあと水を汲んでは又間を隔てゝざあと水を汲んで居るのを聞いた。おつぎは大根を洗つた。おつぎは庭葢の上に筵を敷いて暖かい日光に浴しながら切干を切りはじめた。大根を横に幾つかに切つて、更にそれを竪に割つて短册形に刻む。おつぎは飯臺へ渡した爼板の上へとん/\と庖丁を落しては其庖丁で白く刻まれた大根を飯臺の中へ扱き落す。お品は切干を刻む音を聞いた時先刻のは大根を洗つて居たのだなと思つた。お品は二三日此來もう切干も切らなければならないと自分が口について云つて居たことを思ひ出して、おつぎが能く機轉を利かしたと心で悦んだ。庖丁の音が雨戸の外に近く聞える。
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それから林を斜に田の端へおりて又牛胡頽子の側に立つて其處をそつと踏み固めた。それから暫く周圍を見て立つて居た。お品は庭先から喚ぶ勘次の大きな聲を聞いた。竹や木の幹に手を掛けながら斜めに林をのぼつて後の戸口から家へもどつた時更に叫んだ勘次の聲を聞くと共に、天秤を擔いだ儘ぼんやり立つて居る商人の姿を庭葢の上に見た。 「お品卵欲しいと」勘次は次の桶の青菜に鹽を振り掛けながらいつた。 「幾らか有つたつけな」お品は戸棚の抽斗から白い皮の卵を廿ばかり出した。 「おつう、四五日見ねえで居たつけが塒にも幾らか有つたつけべ、あがつて見ねえか」おつぎに吩附けた。おつぎは米俵へ登つて其上に低く釣つた竹籃の塒を覗いた時、牝が一羽けたゝましく飛び出して後の楢の木の中へ鳴き込んだ。他の鷄も一しきり共に喧しく鳴いた。おつぎは手を延ばしては卵を一つ/\に取つて袂へ入れた。おつぎは袂をぶら/\させて危相に米俵を降りた。其處にも卵は六つばかりあつた。商人は卸した四角なぼて笊から眞鍮の皿と鍵が吊された秤を出した。 「掛は幾らだね」お品は聞いた。 「十一半さ、近頃どうも安くつてな」商人はいひながら淺い目笊へ卵を入れて萠黄の紐のたどりを持つて秤の棹を目八分にして、さうして分銅の絲をぎつと抑へた儘銀色の目を數へた。玩具のやうな小さな十露盤を出して商人は 「皆掛が四百廿三匁二分だからなそれ」秤の目をお品に見せて十露盤の玉を彈いた。 「風袋を引くと四百八匁二分か、どうした幾つだ廿六かな、さうすると一つが」商人のいひ畢らぬうちにお品は 「幾らなんでえ、此の風袋は」と聞いた。 「十五匁だな」 「大概十匁ぢやねえけえ」 「そんだら見さつせえそれ、十五匁だんべ、俺がな他人のがよりや大けえんだかんな」商人は目笊の目を掛けて見せて 「はて、一つ十五匁七分づゝだ、粒は小せえ方だな」商人はゆつくり十露盤の玉を彈いて 「四十六錢八厘六毛三朱と成るんだが、此りや八厘として貰つてな」と商人は財布から自分の手へ錢を明けた。 「お品おめえ自分でも喰つたらよかねえけ、幾つでも取つて置けな」勘次は鹽だらけにした手を止めて遠くから呶鳴つた。 「此の錢で外の物買つて喰つた方がえゝから此れ丈は遣るとすべえよ、折角勘定もしたもんだからよ、俺ら大層よくなつたんだから大丈夫だよ」お品はいつた。 「そんなこといはねえで幾つでも取つて置けよ、癒り際が氣を附けねえぢやえかねえもんだから」勘次は漬菜の手を放して檐下へ來た。手も足も茹でたやうに赤くなつて居る。 「それぢやちつとも殘したものかな」お品は小さなのを二つ取つた。 「そんなんぢやねえのとれな」勘次は大きなのを選んで三つとつた。卵の皮には手の鹽が少し附いた。 「そんぢやそれ掛けてんべ」商人は今度は眞鍮の皿へ卵を乘せて 「こつちなんぞぢや、後幾らでも出來らあな」といひながらたどりを持つた。卵が少し動くと秤の棹がぐら/\と落付かない。 「誤魔化しちや厭だぞ」お品は寂しく笑ひながらいつた。 「どうしておめえ、此の秤なんざあ檢査したばかりだもの一分でも此の通り跳ねたり垂れたりして、どうして飛んだ噺だ」商人は分銅の手を抑へて又目を讀んだ。 「五十匁一分だな、さうすつと一つ十六匁七分づゝだ、大けえからな」 「鹽がくつゝいてつから鹽の目方もあんぞ」勘次は側からいつて笑つた。商人は平然として居る。 「五錢五厘六毛幾らつていふんだ、さうすつと先刻のは幾らの勘定だつけな」 「四十六錢八厘幾らとか言たつけな」お品は直にいつた。 「それぢや差引四十一錢三厘小端か、こつちのおつかさま自分でも商してつから記憶がえゝやな」商人は十露盤を持つて 「どうしたえ、鹽梅でも惡いやうだが風邪でも引いたんぢやあんめえ」といつた。 「うむ、少し惡くつて仕やうねえのよ」お品はいつて 「小端は幾らになんでえ」と更に聞いた。
「勘定にや成んねえなどうも、近頃は仕やうねえよ文久錢だの青錢だのつちうのが薩張出なくなつちやつてな、それから何處へ行つても恁して置くんだ」商人がぼて笊から燐寸を出さうとすると 「又燐寸ぢやあんめえ」お品は微笑した。 「こまけえ勘定にや近頃燐寸と極めて置くんだが、何處の商人もさうのやうだな」商人は卵を笊へ入れながらいひ續けた。 「酷く安くなつちやつたな、寒く成つちや保存がえゝのに却て安いつちうんだから丸で反對になつちやつたんだな」勘次は青菜を桶へ並べつゝいつた。 「上海がへえつちやぐつと値が下つちやつてな、あつちぢやどれ程安いもんだかよ、品が少ねえ時に安くなるつちうんだから商人も儲からねえ」天秤を擔いで彼は又更に 「相場が下げ氣味の時にやうつかりすつと損物だかんな、なんでも百姓して穀積んで置く者が一等だよ、卵拾ひもなあ、赤痢でも流行つて來てな、看護婦だの巡査だの役場員だのつちう奴等病人の口でもひねつてみつしり喰つてゞも呉んなくつちや商人は駄目だよ」商人は行き掛けて 「また溜めて置いておくんなせえ」今度は少し叮寧にいひ捨てゝ去つた。 お品は錢を蒲團の下の巾着へ入れた。さうして棚からまるめ箱を卸して三つの白い卵を入れた。以前は此の土地でも綿が採れたので、夜なべには女が皆竹で絲を引いた。綿打弓でびんびんとほかした綿は箸のやうな棒を心にして蝋燭位の大きさにくる/\と丸める。それがまるめである。此のまるめから不器用な百姓の手が自在に絲を引いた。此の頃では綿がすつかり採れなくなつたので、まるめ箱も煤けた儘稀に保存されて居るのも絲屑や布の切端が入れてある位に過ぎないのである。お品はそれから膨れた巾着の爲めに跳ねあげられた蒲團の端を手で抑へた。それから又横になつた。先刻から疲勞したやうな心持に成つて居たが横になると身體が溶けるやうにぐつたりして微かに快よかつた。 其の晩一年中の臟腑の砂拂だといふ冬至の蒟蒻を皆で喰べた。お品は喰の日は明日からでも起きられるやうに思つて居た。さうして勘次は仕事の埓が明いたので又利根川へ行かれることゝ心に期して居た。
Table of contents
Inside this edition
- 01Part 1
- 02Part 2
- 03Part 3
- 04Part 4
- 05Part 5
- 06Part 6
- 07Part 7
- 08Part 8
- 09Part 9
- 10Part 10
- 11Part 11
- 12Part 12
- 13Part 13
- 14Part 14
- 15Part 15
- 16Part 16
- 17Part 17
- 18Part 18
- 19Part 19
- 20Part 20
- 21Part 21
- 22Part 22
- 23Part 23
- 24Part 24
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