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Edição BooksWhale em japonês por 島崎藤村

島崎藤村の長編小説。旧家、親族、相続、近代化、個人と家制度の重圧を描く。

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Introdução do livro

『家』は、島崎藤村が日本の家制度と近代的個人の衝突を正面から描いた長編です。親族関係、財産、結婚、責任、旧家の崩れゆく秩序を通して、明治末の社会と精神の変化を重厚に描写します。

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島崎藤村 died in 1943, and 家 was first published or composed in 1910; these dates support the public-domain basis for this edition.

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島崎藤村

橋本の家の台所では昼飯の仕度に忙しかった。平素ですら男の奉公人だけでも、大番頭から小僧まで入れて、都合六人のものが口を預けている。そこへ東京からの客がある。家族を合せると、十三人の食う物は作らねばならぬ。三度々々この仕度をするのは、主婦のお種に取って、一仕事であった。とはいえ、こういう生活に慣れて来たお種は、娘や下婢を相手にして、まめまめしく働いた。

炉辺は広かった。その一部分は艶々と光る戸棚や、清潔な板の間で、流許で用意したものは直にそれを炉の方へ運ぶことが出来た。暗い屋根裏からは、煤けた竹筒の自在鍵が釣るしてあって、その下で夏でも火が燃えた。この大きな、古風な、どこか厳しい屋造の内へ静かな光線を導くものは、高い明窓で、その小障子の開いたところから青く透き徹るような空が見える。

「カルサン」という労働の袴を着けた百姓が、裏の井戸から冷い水を汲んで、流許へ担いで来た。お種はこの隠居にも食わせることを忘れてはいなかった。

お種は夫と一緒に都会の生活を送ったことも有り――娘のお仙が生れたのは丁度その東京時代であったが、こうして地方にも最早長いこと暮しているので、話す言葉が種々に混って出て来る。

「お春や」とお種は下婢の名を呼んで尋ねてみた。「正太はどうしたろう」 「若旦那様かなし。あの山瀬へお出たぞなし」 こう十七ばかりに成るお春が答えたが、その娘らしい頬は何の意味もなく紅く成った。

「また御友達のところで話し込んでると見える」とお種は考え深い眼付をして、やがて娘のお仙の方を見て、「山瀬へ行くと、いつでも長いから、昼飯には帰るまい――兄さんのお膳は別にして置けや」 お仙は母の言うなりに従順に動いた。最早処女の盛りを思わせる年頃で、背は母よりも高い位であるが、子供の時分に一度煩ったことがあって、それから精神の発育が遅れた。自然と親の側を離れることの出来ないものに成っている。お種は絶えず娘の保護を怠らないという風で、物を言付けるにも、なるべく静かな、解り易い調子で言って、無邪気な頭脳の内部を混雑させまいとした。お種は又、娘の友達にもと思って、普通の下婢のようにはお春を取扱っていなかった。髪もお仙の結う度に結わせ、夜はお仙と同じ部屋に寝かしてやった。

主人や客をはじめ、奉公人の膳が各自の順でそこへ並べられた。心の好いお仙は自分より年少の下婢の機嫌をも損ねまいとする風である。

仕度の出来た頃、母はお春と一緒に働いている娘の有様を人形のように眺めながら、 「お仙や、仕度が出来ましたからね、御客様にそう言っていらっしゃい」 と言われて、お仙はそれを告げに奥の部屋の方へ行った。

東京からの客というは、お種が一番末の弟にあたる三吉と、ある知人の子息とであった。この子息の方は直樹と言って、中学へ通っている青年で、三吉のことを「兄さん、兄さん」と呼んでいる。都会で成長した直樹は、初めて旅らしい旅をして、初めて父母の故郷を見たと言っている。二人は橋本の家で一夏を送ろうとして来たのであった。

「御客様は炉辺がめずらしいそうですから、ここで一緒に頂きましょう」 とお種はそこへ来て膳に就いた夫の達雄に言った。三吉、直樹の二人もその傍に古風な膳を控えた。

「正太は?」 と達雄は、そこに自分の子息が見えないのを物足らなく思うという風で、お種に聞いてみる。

「山瀬へ行ったそうですから、復た御呼ばれでしょう」 こうお種は答えた。

蠅は多かった。やがてお春の給仕で、一同食事を始めた。御家大事と勤め顔な大番頭の嘉助親子、年若な幸作、その他手代小僧なども、旦那や御新造の背後を通って、各自定まった席に着いた。奉公人の中には、二代、三代も前からこうして通って来るのも有る。この人達は、普通に雇い雇われる者とは違って、寧ろ主従の関係に近かった。

裏の畠で働く百姓の隠居も、その時手拭で足を拭いて、板の間のところにカシコマった。

「さあ、やっとくれや」 と達雄は慰労うように言った。隠居は幾度か御辞儀をして、「頂戴」と山盛の飯を押頂いて、それから皆なと一緒に食い始めた。

「三吉」とお種は弟の方を見て、「田舎へ来て物を食べると、子供の時のことを思出すでしょう。直樹さんやお前さんに色々食べさせたい物が有るが、追々と御馳走しますよ。お前さんが子供の時には、ソラ、赤い芋茎の御漬物などが大好きで……今に吾家でも食べさせるぞや」 こんなことを言出したので、主人も客も楽しく笑いながら食った。

お種がここへ嫁いて来た頃は、三吉も郷里の方に居て、まだ極く幼少かった。その頃は両親とも生きていて、老祖母さんまでも壮健で、古い大きな生家の建築物が焼けずに形を存していた。次第に弟達は東京の方へ引移って行った。こうして地方に残って居るものは、姉弟中でお種一人である。

Capítulo de prévia西が連れて来て三吉に紹介した洋服姿の人は、やはりこの地方に来ている新聞記者であった。B君と言った。奥の部屋では、めずらしく盛んな話声が起った。Prévia

西は三吉の方を見て、 「僕は君、B君なら疾から知っていたんだがネ、長野に来ていらっしゃるとは知らなかった……新聞社へ行って、S君を訪ねてみたのサ。すると、そこに居たのがB君じゃないか」 「ええ、つい隣に腰掛けるまで、西君とは思いませんでした」と記者も引取って、「それに苗字は変ってましょう、髭なぞが生えてる、見違えて了いましたネ。実は西君が来ると言いますから、S君などと散々悪口を利いて、どんな法学士が来るかなんて言っていました――来てみると西君でサ」 西も笑出した。「君、なかなか人が悪いんだよ……僕もね、今度県庁から頼まれてコオペレエションのことを話してくれと言うんで来たのサ。ところが君、酷いじゃないか。僕の来る前に、話しそうなことを皆な書いちまって、困らしてやれッて、相談していたんだとサ――油断が成らない――人の悪い連中が揃っているんだからね」

西は葉巻の灰を落しながら、粗末な部屋の内を見廻したり、こういう地方に来て引籠っている三吉の容子を眺めたりした。三年ばかり山の上で暮すうちに、三吉も余程田舎臭く成った。

「B君は寒いでしょう。御免蒙って外套を着給え」と西は背広を着た記者に言ってみて、自分でもすこし肩を動った。「どうも、寒い処だねえ――こんなじゃ有るまいと思った」 お雪はいそいそと茶を運んで来た。西は旅で読むつもりの書籍を取出して、それを三吉の前に置いて、 「小泉君、これは未だ御覧なさらないんでしょう。中村に何か旅で読む物はないかッて、聞いたら、これを貸してくれました。その葉書の入ってるところまで、読んでみたんです――それじゃ御土産がわりに置いて行きましょう――葉書は入れといてくれ給え」 記者もその書籍を手に取って見た。「私のように仕事にばかり追われてるんじゃ仕様が有りません。すこし静かな処へ引込んで、こういう物を読む暇が有ったら、と思います」 西は記者の横顔を眺めた。

記者は嘆息して、三吉の方を見た。「貴方なぞは仕事を成さる時に、何かこう自然から借金でも有って、日常それを返さなけりゃ成らない、と責められて、否応なしに成さるようなことは有りませんか――私はね、それで苦しくって堪りません。自分が何か為なければ成らない、と心で責められて、それで仕方なしに仕事を為ているんです。仕事を為ないではいられない。為れば苦しい。ですから――ああああ、毎日々々、彼方是方と馳ずり廻って新聞を書くのかナア――そんなことをして、この生涯が何に成る――とまあ思うんです」 「そりゃあ君、確かに新聞記者なぞを為ている故だよ」と西が横槍を入れた。「廃してみ給え――新聞を長く書いてると、必とそういう病気に罹る」 「ところがそうじゃ無いねえ」と記者は力を入れて、「私もすこしは楽な時が有って、食う為に働かんでも可いという時代が有りました。やっぱり駄目です。今私が新聞屋を廃めて、学校の教員に成ってみたところが、その生涯がどうなる……畢竟心に休息の無いのは同じことです」 「それは、君、男の遺伝性の野心だ。野心もそういう風に伝わって来れば、寧ろ尊いサ」と西が笑った。

「そうかナア」と記者は更に嘆息して、「――所詮自然を突破るなんてことは出来ない。突破るなら、死ぬより外に仕方が無い。そうかと言って、自然に従うのは厭です。何故厭かと言うに、あまり残酷じゃ有りませんか……すこしも人を静かにして置かないじゃ有りませんか……私は、ですから、働かなけりゃ成らんという心持から退いて、書籍も読みたければ読む、眠たければ眠る、という自由なところが欲しいんです」 「僕もそう思うことが有るよ」と西は記者の話を引取った。「有るけれども、言わないのサ――言うと、ここの主人に怒られるから――小泉君は、働くということに一種の考えが有るんだねえ。僕は疾からそう思ってる」 「実際――Lifeは無慈悲なものです」 と復た記者が言った。

「君、君」と西は記者の方を見て、「真実に遊ぶということは、女にばかり有ることで、男には無いサ。み給え――小説を読んでさえそうだ、只は読まない――何かしらに仕ようという気で、既に読んでるんだ。厭だね、男の根性という奴は。ホラ、あのゾラの三ヵ条――生きる、愛する、働く――厭な主義じゃないか。ツマラない……」 「小泉さんはこういう処にいらしって、御寂しくは有りませんか」と記者が聞いた。

「そりゃあ君、細君の有る人と無い人とは違うからね」 こう西が戯れるように言出したので、思わず三吉は苦笑した。

「そこだよ」と記者は言葉を続けた。「細君が有れば寂しくは無いだろうか。細君が有って寂しくないものなら、僕はこうやって今まで独身などで居やしない――しかも、新聞屋の二階に自炊なぞをして、クスブったりして――」 西は話頭を変えようとした。で、こんな風に言ってみた。「男が働くというのも、考えてみれば馬鹿々々しいサ。畢竟、自然の要求というものは繁殖に過ぎないのだ」 「そうすれば、やっぱり追い使われているんだね。鳥が無心で何の苦痛も知らずに歌うというようには、いかないものかしら……」と記者が言った。

「鳥だって、み給え、対手を呼ぶんだと言うじゃないか。人間でも、好い声の出る者が好い配偶を得るという訳なんだろう……ところが人間の頭数が増えて来たから、繁殖ということばかりが仕事で無くなって来たサ――だから、自分の好きな熱を吹いて、暮しても、生きていられるのが今の世の中サ」 「何だか僕等の生涯は夢らしくて困る」 「いずくんぞ知らん、日本国中の人の生涯は皆な夢ならんとはだ」 三吉は黙って、この二人の客の話を聞いていた。その時記者は沈んだ、痛ましそうな眼付をして、西の方を見た。西は目を外した。しばらく、客も主人も煙草ばかり燻していた。

Sumário

Nesta edição

  1. 01Full text
  2. 02西が連れて来て三吉に紹介した洋服姿の人は、やはりこの地方に来ている新聞記者であった。B君と言った。奥の部屋では、めずらしく盛んな話声が起った。

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