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Littérature
おらが春
Édition BooksWhale en japonais par Kobayashi Issa
一茶の俳句と散文が生活、悲しみ、子への愛、季節感を映す江戸俳文の名作。
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Introduction du livre
おらが春
『おらが春』は、小林一茶の俳句と散文が結びついた代表的な俳文作品です。日常の情景、子への思い、喪失、ユーモア、季節の感覚が凝縮され、俳句、江戸文学、日本語の短い表現を読む読者に向いています。
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小林一茶は1828年に没し、『おらが春』は江戸後期に成立した作品です。これらの年代は、この日本語原文版のパブリックドメイン性を判断する根拠になります。
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おらが春
Kobayashi Issa
おらが春おらが春
昔たんごの國普甲寺といふ所に、深く淨土を願ふ上人ありけり。としの始は世間祝ひ事してざゞめけば、我もせん迚、大卅日の夜、ひとりつかふ小法師に手紙したゝめ渡して、翌の曉にしか%\せよと、きといひをしへて、本堂へとまりにやりぬ。小法師は元日の旦、いまだ隅々は小闇きに、初鳥の聲とおなじくがばと起て、教へのごとく表門を丁々と敲けば、内よりいづこよりと問ふ時、西方彌陀佛より年始の使僧に候と答ふるよりはやく、上人裸足にておどり出て、門の扉を左右へさつと開て、小法師を上坐に稱して、きのふの手紙をとりて、うや/\しくいたゞきて讀でいはく、其世界は衆苦充滿に候間はやく吾國に來たるべし、聖衆出むかひしてまち入候とよみ終りて、おゝ/\と泣れけるとかや。此上人みづから工み拵へたる悲しみに、みづからなげきつゝ、初春の淨衣を絞りて、したゝる泪を見て祝ふとは、物に狂ふさまながら、俗人に對して無情を演るを禮とすると聞からに、佛門においては、いはひの骨張なるべけれ。それとはいさゝか替りて、おのれらは俗塵に埋れて世渡る境界ながら、鶴龜にたぐへての祝盡しも、厄拂ひの口上めきてそら%\しく思ふからに、から風の吹けばとぶ屑家は、くづ屋のあるべきやうに、門松立てず、煤はかず、雪の山路の曲り形りに、ことしの春もあなた任せになんむかへける
目出度さもちう位也おらが春 一茶
こぞの五月生れたる娘に一人前の雜煮膳を居へて
這へ笑へ二ツになるぞけさからは
文政二年正月一日
とし男つとむべき僕といふものもあらざれば
名代にわか水浴る烏かな 一茶
水江春色
すつぽんも時や作らん春の月 ゝ
山の月花
盗を てらし給ふ ゝ
善光寺堂前
灰猫のやうな柳もお花哉 ゝ
さくら/\と唄はれし老木哉 ゝ
櫻へと見えてじん%\端折哉 ゝ
初午
花の世を無官の狐鳴にけり ゝ
かくれ家や猫にもすへる二日灸 ゝ
葎からあんな胡蝶の生れけり ゝ
上野遠望
白壁の誹れながらかすみけり ゝ
苗代は菴のかざりに青みけり ゝ
花の陰あかの他人はなかりけり ゝ
二月十五日
小うるさい花が咲とて寐釋迦かな ゝ
み佛や寐ておはしても花と錢 ゝ
猫の子や秤にかゝりつゝじやれる 一茶
玉川
さらし布霞の足しに添(に)けり ゝ
Kobayashi Issa Zenshu (Nagano: Shinano Mainichi Shinbun Sha, 1976-80) reads 山の月花盗人をてらし給ふ.
妙裏寺のあこ法師たか丸とて、ことし十一に成りけるが、三月七日の天うら/\とかすめるにめでゝ、くはんりうといふ、太くたくましき荒法師を供して、荒井坂といふ所にまかりて、芹薺など摘みて遊ぶ折から、飯綱おろしの雪解水黒けぶり立てゝ、動々と鳴りわたりて押し來たりしに、いかゞしたりけん、橋をふみはづして、だふりと落たり。や、あれ觀了たのむ/\と呼はりて、爰に頭出づると見れば、かしこに手を出しつゝ、たちまち其聲も蚊のなくやうに遠ざかると見るを、此世の名殘として、いたましいかな、逆巻く波にまきこまれて、かげも容も見へざりけり。あはやと村の人々打群りて、炬をかゝげてあちこち捜しけるに、一里ばかり川下の岩にはさまりてありけるをとり上て、さま%\介抱しけるに、むなしき袂より、蕗の薹三ツ四ツこぼれ出たるを見る(に)つけても、いつものごとくいそ/\かへりて、家内へのみやげのれうにとりしものならんと思ひやられて、鬼をひしぐ山人も皆々袖をぞ絞りける。とみに駕にのせて、初夜過ぐるころ寺にかき入れぬ。ちゝ母は今やおそしとかけ寄りて、一目見るよりよゝ/\と人目も耻ず大聲に泣ころびぬ。日ごろ人に無常をすゝむる境界も、其身に成りては、さすが恩愛のきづなに心のむすび目ほどけぬはことはりなりけり。旦には笑ひはやして門出したるを、夕には物いはぬ屍と成りてもどる、目もあてら(れ)ぬありさまにぞありける、しかるに九日野送なれば、おのれも棺の供につらなりぬ。
思ひきや下萌いそぐ若草を
野邊のけぶりになして見んとは 一茶
長々の月日雪の下にしのびたる蕗、蒲公(英)のたぐひ、やをら春吹風の時を得て、雪間/\をうれしげに首さしのべて、此世の明り見るやいなや、ほつりとつみ切らるゝ草の身になりなば、鷹丸法師の親のごとくかなしまざらめや、草木國土悉皆成佛とかや、かれらも佛生得たるものになん。
獨坐
おれとしてにらみくらする蛙哉 一茶
梅の花爰を盗めとさす月か ゝ
松島の小隅は暮て鳴く雲雀 ゝ
大猫の尻尾でなぶる小蝶かな ゝ
三月十七日ほしな詣
花ちるやとある木陰も小開帳 ゝ
通りぬけせよと垣から柳かな ゝ
餅腹をこなしがてらのつぎ穂哉 ゝ
正月元日の夜の丑刻より始りて、打つゞき八日目/\に、天に音樂あると云ふこと、誰といふともなく云觸らして、いつ/\の夜そんぜうそこにてしかときゝしと人もあり、又吹風の迹なし事とけなすものもあり。其噂東西南北にはつと弘りぬ。つら/\思ふに、全く有りと信じがたく、又ひたすらなしとかたつけがたし、天地ふしぎのなせるわざにて、いにしへ甘露を降らせ、乙女の天下りて舞しためしなきにしもあらず、今此天下泰平に感じて、天上の人も腹鼓うち、俳優してたのしむならめ、それを聞得ざるは其身の罪の程によるべし。何にまれあしからぬとりさたなりと、三月十九日夕過より、誰かれ我菴につどひつゝ、おの/\息をこらして今や/\と待うち、夜はしらしら明て、窓の梅の木に一聲有り、
今の世も鳥はほけ經鳴にけり ゝ一茶
鶯の馳走に掃しかきねかな ゝ
馬までもはたご泊や春の雨 ゝ
Chapitre d'aperçu廿一日節分Aperçu
一聲に此世の鬼は迯るよな ゝ
けふからは正月分ンぞ麥の色 ゝ
札納
梅の木や御祓箱を負ながら ゝ
Chapitre d'aperçu二十七日晴Aperçu
坊守り朝とく起て飯を焚ける折から、東隣の園右衞門といふ者の餅搗なれば、例の通り來たるべし、冷てはあしかりなん、ほか/\湯けぶりのたつうち賞翫せよといふからに、今や/\と待にまちて、飯は氷りのごとく冷えて、餅はつひに來ずなりぬ
我門へ來さうにしたり配餅 一茶
他力信心/\と一向に他力にちからを入れて頼み込み候輩は、つひに他力繩に縛れて、自力地獄の炎の中へほたんとおち入候、其次に、かゝるきたなき土凡夫をうつくしき黄金の膚になしくだされと、阿彌陀佛におし誂へに誂ばなしにしておいて、はや五體は佛染み成りたるやうに惡るすましなるも、自力の張本人たるべく候。問ていはく、いか樣に心得たらんには、御流儀に叶ひ侍りなん。答ていはく、別に小むづかしき子細は不存候、たゞ自力他力何のかのいふ芥もくたを、さらりとちくらが沖へ流して、さて後生の一大事は、其身を如來の御前に投出して、地獄なりとも、極樂なりとも、あなたさまの御はからひ次第あそばされくださりませと、御頼み申ばかりなり。如斯決定しての上には、なむあみだ佛といふ口の下より、慾の網をはるの野に、手長蜘の行ひして、人の目を霞め、世渡る雁のかりそめにも、我田へ水を引く盗み心をゆめ/\持べからず、しかる時は、あながち作り聲して念佛申に不及、ねがはずとも佛は守り玉ふべし、是則、當流の安心とは申なり、穴かしこ
五十七齡
ともかくもあなた任せのとしのくれ 一茶
文政二年十二月廿九日
Table des matières
Dans cette édition
- 01Full text
- 02廿一日節分
- 03二十七日晴
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